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偽造ほんわかABCD

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槍兵への愛着MAX
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orz氏のストーリー性豊かなカード絵が好きだぁああああ!掘り返しとかすげぇよ!
もうとっくに既出かもしれませんが、gida氏の追撃風のむすめっこは、はいてない属性です。ていうかスカートすら…( ゚д゚)
はい、どうもRATです。
今日はABCD小説のプロローグ部分のⅡをうpしにきました。

別サイト?めんどくせぇ。
だって書いてたらまだプロローグにしかならない部分が前回並のページ数できちゃったんだもん。2ページ分ですむ事を15ページもやる俺バカス。

って事で展開的には全然進んでないんだ。ごめん。
でも応援してくれる人がいたからには僕がんばる!

そんな、結局ブログでやんのかよ?な小説②は続きから。
①を読んでないかたはよかったら先にそちらを。


 プロローグ Ⅱ




 私はあの後、急いで隣の家に行き、傷ついた兵士に向かって何度もヒーリングの呪文を詠唱したが、術式は二度と完成せず、結局、私はデルフォイ一人を助けただけで、その日のうちに何人もの虚しい死を見届けなければならなかった。母は、それでも充分だと言って慰めてくれたが、私は、一度出来た事が出来ない悔しさと無力感で胸が押しつぶされそうだった。
 
 その日の深夜、私は前の晩に盗み聞きしたサルトルと隊長の会話から、深夜に隊長が村を出る事を知っていたので、寝たふりをしながら時間を待ち、玄関のドアに手をかけた隊長にそっと話しかけた。
 「隊長さん、お気をつけて」
 隊長は軍人らしい素早い動きで身構えながら振り向き、一瞬、しまった、という顔をしたが、声の主が私だという事を確認すると、すぐにふっと息を吐いた。
 「まったく侮れない小娘だ」
 「あの、大丈夫です。…誰にも言わないですから。挨拶だけしたくて、その」
 「そんな事は心配してないさ。どうせ、私が脱走した事なんて明日の晩にはみんな気付く」
 隊長は自嘲気味に言いながら、物音一つ立てずに私に近づき、両手のひらを私の頬に軽くそえて、私の顔を上に向け、自身も顔を近づけた。
 「娘、お前は綺麗な眼をしてるね」
 「え?」
 私が戸惑うのも気にせず、隊長はかがみこんで、さらに顔を近づける。窓から入る月明かりが、隊長の整った顔を淡く照らしだす。その顔にはどの種類の感情も見出せなかった。
 「でも、『何で脱走するんだ、脱走は悪い事だ』って、その眼が言ってるよ」
 隊長の普段通りの澄んだ声に、私は心のうちを見透かされたような気がして、背すじの凍るような思いをした。隊長は続ける。
 「確かに、脱走は悪い事だ。特に、多くの兵を束ねる立場の者が突然何も言わずに逃げ出すなんて、最低の行いだ。だけど、私はそれでも、やらなければならない事があるんだよ」
 「…やらなければならない事って?」
 私は隊長の威圧感に圧されながらも、辛うじて聞き返した。
 「私の場合は人探しだが、理由なんて人それぞれさ。詭弁のようだが、それが本人にとって大事なら、何だっていいんだ。娘、お前も…」
 隊長はそこで一端言葉を止め、私の眼を力強く覗き込んだ。その眼には不思議と隊長独特の威圧感はなく、どちらかと言うと、その瞳の奥には寂しさのようなものがあるように思えた。
 「娘、お前には自分が思っている以上の力がある。お前はこれから、お前が考えもつかなかった様な、大きな流れに巻き込まれていくだろう。その流れは、時代と言えるのかもしれない。運命とも言えるだろう。何にしろ、その流れの最中で、必ず今の私のように、選択を迫られる時が来る。いいか、その時、もしもお前の中に、譲れない何かがあるなら、迷わずそれを選択するんだ。物事は、良いか悪いかだけで考えるものじゃない。一番重要なのは、自分にとって大切なものは何か、だ。善悪の選択を間違えても、心の選択は間違えるな…。そう、私ももっと早くこうするべきだったのだ…」
 後半になるにつれて、隊長はまるで自分に言っているかのようにゆっくりと、一語一句を確認するように話した。私は隊長の言葉を理解しようと勤めたが、きっとこの時の私には、その意味の半分も理解出来ていなかったと思う。
 私が言葉を失っていると、隊長はすっと立ち上がって、玄関の方に歩き出した。
 「今はまだ考えたってわからんさ。要は好きなように生きろって事だって思えばいい。それから、世話になったのに何も言わずに行こうとしてすまない。ありがとう。この村の酒は旨かったって軍の間でも評判だった。交易路さえしっかりしてくれば、この村の未来も明るいぞ。あとは、」
 隊長はつ、と立ち止まる。
 「デルフォイを救ってくれてありがとう。あれはバカだが、頼りになる良い奴なんだ。
  …今度だって、デルフォイは正気を失ってヌーティヌに突っかかっていった奴を助けようとして怪我しちゃったのよ。本当のバカね。ふふっ…。
  …まぁとにかく、デルフォイにも挨拶をしてないのはちょっと悪いと思ってる。出来たら、後で私からの挨拶を伝えて…」
 「その必要はないですぜ、隊長」
 隊長は振り返って、今度こそ本当に、しまった、という顔をした。私も後ろを振り返ると、そこには包帯の上から胸当てをしたデルフォイの姿があった。
 「隊長、こんな遅くに一人でどこ行くんでさぁ?外にはまだヌーティヌの群れが残ってるんですよ?よっぽどの急用ですかい?」
 「そんな事は見ればわかるだろう。それよりお前、身体はもう良いのか?それと私はもう隊長ではない」
 さすがの隊長も幾分焦ったのか、早口でまくし立てる。
 「はい、このお嬢ちゃんは天使ですぜ。もうどっこも痛くねぇ。…えーと、隊長じゃねぇとなると、メリエさんって呼べば良いんですかぃ?」
 「茶化すんじゃない」
 私は、『多分、茶化したんじゃなくて本気で言ってるんじゃないかな』なんて思いながら、二人の様子を見ていた。焦る隊長…メリエは、先ほどとはうって変わって可愛らしく見えた。
 「とにかく隊長、じゃなかった、メリエさんが行くところがどこだって、村から出るってんなら俺は護衛としてついていきますぜ」
 メリエは肩をすくめてしばらく黙った。デルフォイはこれと言い出したらきかない性格なのだろう。会ったばかりの私から見てもデルフォイの説得は困難だろうと思われた。たっぷり二呼吸以上おいて、メリエはやっと口を開いた。
 「…好きにしろ。ちょうど軍を抜ける前に、隊長の最後の仕事として、お前を強制除隊しておこうかどうか迷っていたんだ。手間が省けたよ」
 さすがにこれはメリエ流のジョークである事がわかったのだろう、デルフォイはニィっと笑って身を乗り出した。
 「お嬢ちゃん、そういう事だから俺ぁ行くけど、ホントにありがとうな!命の恩人だぜ!まぁ、その恩を返す為にこの村に骨をうずめて働きてぇのもやまやまなんだが、メリエさんがこう言っちゃあしょうがねぇからよ」
 「そんな事言って、お母さんの傍に居たいだけでしょ?」
 私が意地悪っぽく言うと、デルフォイは壁に立掛けていた剣を手に取りながら、「まったく、お嬢ちゃんにはかなわねぇ!」と言って大声で笑った。
 「大声を出すな、それから、そのメリエ、さん、ってまどろっこしい呼び方もやめろ。メリエと呼べ」
 軍を抜けても基本的な上下関係は変わらないらしく、デルフォイはさっそくメリエに怒られながらも、さすがは軍人、ものの数分で旅支度を終え、メリエの待つ玄関に立った。二人は最後に、私にもう一度別れの言葉を言い、私も笑顔で二人の無事を祈った。
 
 
 それから一ヶ月が経ち、傷ついた兵士達がある程度癒えると、サルトルは軍を率いて赤国へと帰っていった。死にかけていたデルフォイはともかく、サルトルが隊長の事を兵士達にどう伝えたのかはわからない。どう伝えたとしても、隊長が脱走した事は兵士達から見ても明らかなように思うが、不思議と兵士達に混乱した様子はなかった。或いは、脱走に気付いていても、良き隊長だったメリエが軍法会議にかけられる事は誰も望まなかったのかもしれない。
 こうしてやっと、村にいつも通りの穏やかな日々が帰ってきた。若干の肌寒さが、収穫期の近い事を知らせ、村の人々は、長く滞在した兵士達のおかげでほとんど空っぽになってしまった食料庫をいっぱいにする意気に湧いていた。
 私にとっては退屈な日々が帰ってきたわけになるが、私はその退屈な日々ももう長くない事を知っている。軍が出発する時、サルトルは私を呼んで言ったのだ。
 「私の眼に狂いが無ければ、貴方には類稀な魔法の才能がある。ハルトゼイネル魔法学院で魔法を学ぶ気は無いか?」
 もちろん、私にとってそれはとても魅力的な誘いだった。しかし、魔法学院に通うのに、南大陸の通貨が必要なのは知っていたし、二つ返事で了承出来るわけではない。私は迷うような仕草をしたが、サルトルは私の考えなどお見通しだった。
 「もちろん、金など必要ない。卒業後に赤軍に来いなどと、特別な条件もつけない。私はただ才能を埋もれさせたくないのだ。私はハルトゼイネル学院長とも知り合いだ。必ず、特待研究生の椅子を用意し、冬になる前には貴方を迎えに来る事を約束する」
 私は下衆な考えを見透かされたのを恥じながらも、首を縦に振るよりなかった。
 
 私としては、夫にも先立たれ、一人娘の私を大事に育てている母に、「遠くの国に行きたい」と言い出すのはとても気の重い事だったが、母は、意外にも簡単にそれを了承してくれた。その上、あと二十年時代が違えば自分が行けたのに、なんて、理屈のよくわからない嫉妬までしてきた。私は母に、魔法を学んだら必ず帰ってきて村に役立てる事を約束した。母は、そんなに気負わなくてもこの村は楽しくやっていける、と言ったが、話しているうちに私の空想は膨らみ、メリエの言っていた、地酒を村の特産品にするアイディアを、さも自分のアイディアのように母に話し、しかも、それを自分の魔法で運ぶのだ、と、少々無邪気過ぎる計画を立てて語った。その日、久しぶりに母と何時間も話した。
 サルトルの迎えが来る前から、私はもう魔法学院の生徒になったような気持ちでいて、毎日、母のコレクションの魔法書を読んでは、大魔術師のような険しい顔をして、眉間の辺りに力を込めながら、花瓶や木彫りの人形に向かって呪文を詠唱した。しかしもちろん、術式は一度も完成しなかった。(花瓶や人形に向かって本当に炎つぶてが飛んだりしたら、それはそれで非常に困るが)
 母が言ったのか、それとも浮かれた私が自分でも気がつかないうちに言ったのか、村の人々は私が旅立つ事をいつの間にかみんな知っていた。村の誰もが、私に会う度に私の旅立ちの事について触れ、無事を祈ってくれたが、そこはやはり外の世界に疎い村、その内容は多種多様というか、誰一人も旅立ちの理由を正しく理解してはいなかった。
 「今度、偉い学者さんになるんだって?物知りだとは思っていたけれど、すごいねぇ…。頑張るんだよ」
 「海を越えて誰も見た事ない大陸を目指すんだろう?あんた、そんなもんあるかもわかんないんだから、やめときなよ」
 「魔女になるんだって?はぁ~、まだこんな若いのに…。最近は進んでるっていうか、変わってるよなぁ~」
 「お前、赤国に嫁に行くのか…。ちっちゃい頃、俺と約束したの覚えてるか?…いや、何でもない。幸せにな…」(彼が言いたい事はわかるが、私は誓って約束なんてしていない)
 みんながこんな調子だったので、私は収穫の忙しさの中、出会う人出会う人に正しい理由を説明しなければならなかった。
 
 とにかくめでたいという事だけはみんなわかってくれた様で、収穫作業がようやく一息ついた頃、収穫祭のついでに私の旅立ちも祝ってくれる事になった。しかし喜んだのもつかの間、そのお祝いというのは、私を収穫祭に行われる舞踊劇の主役に抜擢する、というありがた迷惑なものだった。おかげで私は収穫作業の疲れを癒す暇もなく、踊りを覚え、練習しなければならなかった。
 収穫祭当日、村の人々は各々の手に今年一番の作物を使った料理を持ち、村の外れにある広場に集まった。幸い今年は豊作だったので、赤軍の事を愚痴る人は一人もいない。母を含む奥様の方々は、にこやかにお互いの料理の腕を褒めちぎっていたし、男達は、うちの野菜が一番出来が良かったとか、うちの家畜の毛並みが一番だ、とか、自慢話に夢中になっていた。
 私も各家庭の料理を堪能し、同世代の友達とのおしゃべりを楽しんだ。そのうちに、笛の音が響き始めたので、私は急いで林の中に隠れて衣装に着替えた。
 広場の中心部、いつ誰が何の為に建てたのかわからない猫型の巨像の前の舞台で、笛と太鼓が鳴り響き、そこに人々の囃子が加わって、騒がしい舞踊劇が始まった。劇と言っても、ストーリーは極単純で、雨の神様が地上の姫に恋をして、それを姫がフってしまった為に、雨の神様は雨を降らせなくなってしまい、困り果てた王が歌と踊りで何とか雨の神様の機嫌を取り、雨が再び降るようになって、めでたしめでたし、というものだった。私は傷心の雨の神様を癒す踊り子の役だった。
 練習の時は、まったくなんでこんな事に、と不貞腐れていたが、いざ出番が来て踊ってみると、音楽と村のみんなの囃子の中で踊るのは案外気持ちが良く、私は我を忘れて踊りを楽しんだ。私はその時になって、この村を離れなければならない事がちょっぴり悲しくなった。
 私の出番が終わった時には、私は自分でもわかるほど頬と眼を赤くしていた。みんなが口々に、上手だったよ、とか、綺麗だったよ、と言ってくれた事も、その時の私の心にはしくりと刺さった。
 
 舞踊劇が終わって、料理もあらかた食べ尽くした頃、村の人々は各々の片付けを済ませ、一人、また一人と家に帰り始めた。収穫祭も終わろうとしている。私は、これが最後だと思うとなんとなく帰る気が起こらず、人のまばらになり始めた広場の隅に三角座りをして、ぼんやりと猫の巨像を眺めていた。
 「ほうほう、良い祭りでしたね。あなたの踊りもすばらしかった」
 不意に横から話しかけられ、そちらを向くと、いつの間にか私のすぐ隣に男が立っていた。なんとその男は身長二メートルは軽く超えているような大男で、しかも、頭からお腹の辺りに至るまで、髪とも髭ともつかない白い毛をふさふさと垂らしていた。老人のような風貌には思えるが、その髪と髭のおかげで人相は殆どつかめない。とにかく、村の人ではないと一目でわかった。というか、ニンゲン族かどうかすら疑わしい。
 「はい、ありがとうございます。えーっと、あなたは?」
 私は、もしや私の踊りがあまりに情熱的だったから、本物の雨の神様がやってきたんじゃないか、なんて思いながら聞いた。さすがにそれはないとしても、その男は本当に仙人か何かのように見えた。
 「あぁ、はい、私はサルトルさんの使いの者です。この村に魔法の素質のある者がいると聞いてやってきたのです。あなたは何かそのような話は聞いていないですかな?」
 私はどきりとした。何もこんな日にやって来なくてもいいのに。
 「それ、私です。ハルトゼイネル魔法学院に入学させて頂けるという話ですよね?」
 「ほうほう、あなたでしたか。これは偶然だ。ほうほう」
 どうやら、『ほうほう』というのはこの人なりの笑い声のようだった。もしかすると髭があまりに長すぎてあごが重たいのかもしれない。そうも思いたくなるほど、この仙人のような人物はとてものんびりとした話し方をしていた。その間の抜けた雰囲気に、私は少し不安になる。
 「あの、失礼かもしれませんが、あなた、一人ですか?」
 「ほうほう、私の事はトールとでも呼んで下さい。心配には及びませんよ。ちゃんと無事にお連れしますから」
 さっきからまったく答えになっていない。第一、この男は何の確認もせずに私を入学者だと認めたが、それでいいのだろうか?
 「まぁ、あの、それよりも、今日はさすがにもう出発できません。よろしければあなたの家に私を泊めて頂けますかな?」
 「それは、大丈夫ですけど…」
 「それではあなたの家に参りましょう。実は、サルトルさんからここのお酒は旨いと聞きましてね。ほうほう、ほうほう」
 私は想像していたよりもかなり格好悪い旅立ちになりそうな予感に頭痛を覚えながら、仙人のような男、トールを家に案内した。
 
 
 その晩、トールはそれまで私の家に来たどんな人よりも多く酒を呑んで仕舞いには酔い潰れ、机に突っ伏したまま眠ってしまった。私も母も、その巨体をどうする事も出来ず、仕方なく毛布だけかけてあげる事にした。それから、ほとんど正体不明のまま酔い潰れたこの男に、本当について行くかどうか、二人で真剣に話し合った。
 翌朝私が起きると、家の中にトールの姿はなかった。私は、まさか酒を呑みに来ただけではあるまいな、と、寝起きの重い頭でぼんやり考えながら外に出た。
 もう冬も近かったが、空には雲ひとつなく、暖かい朝だった。私は深呼吸をして、初冬の朝特有の澄んだ空気を堪能した。と、視界の隅に、村の外れに向かって歩いていくトールの姿が見えた。私は小走りで追いつき、声をかけた。
 「トールさん、おはよう。どこ行くの?」
 私は、あなたはもしや酒泥棒か、という意味を込めた牽制として、どこ行くの、と聞いたつもりだったが、トールはゆっくりと振り向いて、穏やかに答える。
 「おはようございます。ほうほう、良い朝ですね」
 この男は質問に答えるという事を知らないのだろうか。私は、昨夜の深酒の影を微塵も感じさせずケロリとしているトールに、少しいらだちを感じた。
 「あの、今日出発するんですか?」
 トールが歩くのをやめないので、しかたなく私も隣にならんで歩きながら話しかける。トールはゆっくり歩いているように見えるが、その歩幅の大きさゆえに、意外とならんで歩くのは大変だった。
 「ええ、あの広場なんて丁度良いでしょう。あなたも魔術師のタマゴとして、見ているといい」
 要領を得ない返答にうんざりしながらも、私は少し興味を惹かれた。この、質問に答えない癖を持つトールという男が、もしもちゃんと私の質問の意味を理解しているのなら、今から出発の為に必要な何かの魔法を使うのかもしれない。そう思った私は黙ってトールについていった。
 広場につくと、トールはその身体相応に巨大な手を自分の口にあて、三度指笛を鳴らした。とても指笛とは思えない大きな音が空に響いた。トールは、指笛を鳴らし終わると、どっこいしょ、という声がついてもおかしくないほどの緩慢な動きで地面に座り込んだ。
 私はしばらく注意深くトールの様子を伺っていたが、トールはそれきり何かをするわけでもないようだった。私は若干失望しつつ、トールの隣に座り込む。
 これからの事を考え、憂鬱になりながら、しばしの沈黙。
 「あれを見なさい」
 トールが南東の空を指差しながら言った。指の先に眼を向けた瞬間、私の憂鬱な気分は一気に晴れた。
 「すごい…」
 まるで巨大な雲のような、真っ白な鯨が空に浮かんでいた。ヒレが異常に大きい以外は、見た目は鯨そのもので、その巨大なヒレをゆっくりと上下させながら、雲ひとつ無い空を悠々と飛んでいる。トールが腕を振ると、空飛ぶ鯨は、ふおおおおお、という村全体に響き渡る轟音と共に、背中から蒸気のようなものを噴き出した。
 「すごい!あれに乗るの?」
 「私の使い魔のひとり、飛行鯨のペティちゃんです。さあ、支度をしておいでなさい」
 私の興奮を知ってか知らずか、トールがのんびりと言う。
 こうして私の予感は見事に覆され、飛行鯨の轟音によって起きだしてきた村のみんなに見送られながらの、私の旅立ちの光景は、私にとってとても満足出来るものになった。
 
 飛行鯨は、飛んできた南東の方角に向かって、ひたすら飛び続けた。眼下に広がっていたアリサドの大地は、すぐに海にかわる。海を渡っている間、トールはこの世界がどんな形になっているかを説明してくれた。私は、アリサドの南には赤国、北にはネバタ砂漠とメルタ、東は広大な海で、西には帝国と、そのさらに西には広大な森が広がっている事までは本で読んで知っていたが、世界はそれよりも、もっと、もっと広大だという事に驚いた。正直、私はこの飛行鯨に乗って一日飛んだだけで、世界を一周できるような気がしたが、それをトールに言うと笑われてしまった。
 アリサドを飛び立ってから二日目の昼間に、陸に辿りついた。陸に辿りつくと、飛行鯨は進路を変えて、海岸沿いを北へ飛び始めた。私は、生まれてからまだ一度も足を踏み入れていない大地を興味津々で眺めた。なだらかな丘と森が続き、そのところどころに街や村がある、美しい大地だった。そして、日が落ちる前に、ついに私は岬の先端に堂々とそびえるハルトゼイネル魔法学院に辿りついた。
 魔法学院は、村の猫の巨像の何倍も巨大で、かつ、美しかった。練られた石で造られたそれは、飛び梁が複雑に絡み合い、アーチを作り、壁面を複雑に装飾された大小いくつもの尖塔が天を指して伸びている。そして、その全てが一つのモチーフのように調和していた。(簡単にそちらの言葉で表せば、ハルトゼイネル魔法学院は中世ゴシック建築で建てられた巨大な城のようだった)
 一番大きな建造物の正面玄関から、蒼色の石を敷き詰められた小道が放射状に伸び、魔法学院の外に出る一本の小道を除いて、それぞれの小道が別の棟の玄関に続いている。そしてその棟同士も、中空に造られた渡り廊下のようなもので繋がっていた。そうして建物全体に囲まれた小道の走る空間には、花壇やベンチが置かれている。中庭のようなものだろうか。そこを生徒達が歩いていたり、ベンチに座って話しているのが見える。
 飛行鯨は、その庭に降り立った。私とトールが飛行鯨から降りると、生徒達が一斉に近づいてきた。
 あら、私ってそんなに歓迎されているのかしら、と思ったのもつかの間、生徒達から驚きの一言を浴びせられた。
 「ハルトゼイネル学院長!お久しぶりです!」
 もちろん、その言葉は私にかけられたのではない。私の横で、ほうほう、とのんきに笑っているトールに向かってだった。
 
 

今回も大量に誤字とかありそうだから公開後もひっそりと修正していくぜ!だから怒んないでね!あと宣言どおりまったく進展してなくてごめんね!あと、次から「これなんてハリーポッター?」な展開になるのみえみえでごめんね!

あやまってばっかだけどこんなところだお。

ストーリーものの連載って精神磨り減るよね…(´・ω・`)
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槍兵は俺が護る。
座右の銘は憎まれ上手の不器用貧乏。
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